坂口 英明 デザイナー/モデリスト |
『SEED』 この作品は、他の受賞作品程の派手さはないかもしれません。この作品の素晴らしいところを“デザインが全て収まっている”という表現で評価をしたいと思います。良いデザインというのは“収まっている”。この作品のデザインは、コンセプトから素材のコントラストやパターンメイキングの部分など、全て総合して収まっており、大変優秀であると判断し優秀賞に致しました。 <総評>
デジタルや3Dなどの今日性を取り入れながら、より新しいフォルムの追求と対象アイテムの新しいアプローチをもう少し追求していただきたいです。それらを有機的に結び付けてデザイン展開を行って欲しいと思います。 |
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舘鼻 則孝 アーティスト |
『願掛けだるまバッグ』 審査中から凄く話題になっていたように、全作品の中で1番インパクトがありました。 それが勝ち残って来たことに繋がると思うが、作品自体のクオリティーも非常に高く、審査員の皆さんが納得のいく作品であったと思います。但し、少しストレート過ぎるところがあるため、もう少し何かバッグというコンテンツと上手くテーマが共存出来ると尚良いと考えます。 <総評> 作品からポートフォリオまでトータルで完成されているものは数点しかありませんでした。機能と独創性を兼ね備えたオリジナリティーを今以上に求めます。完成度についても同じことが言え、デザインスケッチが良くても実現されていないものは本コンペに於いては意味をなさないため、自身の力量を把握することも重要です。 |
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廣川 玉枝 ソマルタクリエイティブディレクター |
『ネオンアフリカン』 この作品は出てきた時にパッと目につく華やかさがあり、スポーティーさ・YKKのファスナー(の使い方)・フォルムというところでも優れていることから高得点に繋がったと思います。全体的にユニークでセンスも感じますが、もう少しファスナーの機能性も活かすこと、プリントに頼り過ぎず縫製で魅せることが出来ればより良いと思う部分がありました。凄く元気のある作品で良かったと思います。 <総評> デザイン画が凄く良く、作品がそのイメージに辿り着けていないものが幾つかありました。機能とデザイン・完成度のバランスが取れていることも大切です。デザイン画が良くても完成度の足りないもの、完成度が高くてもデザインが良くないものは、良く検討してバランスを取れるようにすると良いでしょう。YKK商品の良さを引き出せるデザインを期待しています。 |
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藤田 恭一 デザイナー |
『for when. . .』 まずこの作品の『for when. . .』その時のために、するとその時といったテーマが良いです。ある一時点を通して過去と現在が繋がっているといったコンセプトに好感が持てました。まず過去として見ると、この作品の中には幾つもキルティングの模様があります。キルティングの模様というのはそれぞれ意味があり、それは歴史を紐解き、過去を尊重するという気持ちが入っている。それと未来に関しては、グレーと白との非常に良いコントラストに広げると見えるオレンジが加わり、その中にYKKのファスナーやスナップがさりげなく入っている。そしてそれぞれが機能を伴っていることに、凄くフューチャリストを感じる。 それともう一つ、この作品は震災というキーワードにもあったように、着る側にとって機能的な点として“人の命を守らなくてはならない”。生命を守るという事は、プロダクトとしての完成度が高くなくてはならない。スナップで成るポケットを初め、内側も非常に良く考え作られている完成されたプロダクトです。何よりも“心を守る”。震災で傷ついた人達がこの作品を身に纏うことによって優しい気持ちになれると感じました。何故かというと、この作品には1つ1つステッチが入っており、そこには糸を紡ぐように、1本1本ステッチを掛けたことにより中野さんの気持ちが全部入っている。それは着た人が必ず心で感じるものです。 “過去と未来”、“人(生命)を守る”、そして何より“心を守る”ということが伝わってくる非常に良い作品だと思いました。 |
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村手 謙介 アーバンリサーチブランドディレクター兼統括バイヤー |
『Black & White』 他の先生方と異なり私は「物が売れるのか/実在するのか」というバイヤーの目線で、審査致しました。実際に商品も履き、歩かせていただき審査したのですが、非常に完成度が高いと感じました。また、帽子用アジャスターとソフィックス®を目立たせ過ぎず、上手くデザインに溶け込ませさせている点が非常に面白いと思いましたし、トレンドであるスポーツとモードがMIXされた部分を上手く表現されていると感じました。ソールの部分がオリジナル(作成したもの)でなかったということだったので、その点をアップデート出来れば、是非買い付けをさせていただきたいと思います。 <総評> 初めて参加致しましたが、ファスナーなどの附属と全体のバランス感が大事だと感じました。やはり先10年を考えると、いかにスマートでファッションを楽しむかがキーワードになってくると思います。その中で、市場に受け入れられながら独創的な“らしさ”を出していかなければならない。そう考えると作品によっての差があったように思えます。 |
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三原 英詳 バックデザイナー |
<ファッショングッズ部門 該当なしについて・グッズ部門総評> 今回は残念な結果となりましたが、皆さんの作品は、決して悪くはありません。ですがとても良くはないです。何故かというと、皆さんの商品の作り方や考え方が、形から入り、それにファスナーを付けて、“なんか格好良く見せよう”としているからではないでしょうか。今回我々審査員が見て、今までのグランプリと違う点というのは、見た瞬間に心が揺さぶられるような感じがなかったということです。 バッグやファスナーというのは、本来人の役に立つもので、変化によって変化前よりもっと使い勝手が良くなり、使う人が喜ぶなど、色々な意図があります。それを集約したものを更に組み立てていき、デザインが生まれる。そうして生まれて来たものが(グランプリに相応しく)、議論の末、今回は該当なしと判断しました。 最初のコンセプトやデザイン画を出していただく時点で、是非考えていただきたい。我々審査員は、5千何百点という中から選んでいくので、審査員によっては文字全てを読む訳ではなく、視覚で伝わるもの・心が揺さぶられるようなものを2次審査で実際に作品を見たいと思います。デザイン画でもポートフォリオでも、限られている時間で伝えるためには、作品の特徴やファスナーの機能をどう活かしているのか、どのように鞄が変化するのかという点を分かりやすく表現することが必要です。実際に販売する時は、商品について自分が全てを細かく説明できる訳ではない。手に取り購入してすぐに分かる。今までのグランプリはそれが出来ていたと思います。 毎年感じることではあるが、今までのグランプリの模倣やコンテストの傾向と対策に頼っているようにも思え、勿体無いです。今回は、期待を込めて少し辛口なコメントとさせていただきました。 |
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YKK株式会社 代表取締役社長 猿丸 雅之 |
『真四角』 繊維製品であるファスナーの非常に柔らかい「柔」というイメージに対し、四角・真四角「硬」硬いイメージを合わせるという本当に良いコントラストの組合せだと思いました。また、テトリスから連想されたという遊び心がこういう形の作品となり、とても素晴らしいと評価しております。 『Pull up』 まず作品の色の鮮やかさ、素晴らしい色彩だと思います。それから1枚の布がパーメックスを使って、体に沿い色々なシルエットに変化しているということに注目しました。最近はスナップやアイレットウォッシャーを飾りとしてお使いいただく場合も多いのですが、これは本来の製品の持つ機能を使い、それを付け外しすることで形が変わっていくという点をYKKとして評価致しました。 <総評> 今年はグッズ部門でグランプリが該当なしという大変残念な結果になりました。それからアパレル部門でも、審査会場に入った瞬間に審査員をうならせるような作品は少なかったのかなと感じました。作品その物は、先生方からの講評にもありましたように大変素晴らしいですし、特に材料の作り込みという点に関すると非常にレベルが高いと思います。ただ私共も16回と、回を重ねるごとに期待値がだんだんと上がっていっているということも事実です。 更に今年は再帰反射ファスナーなど新しくご提案したアイテムを沢山使っていただいており、やはり我々の製品が本来持つ機能を活かして欲しいという思いがございます。弊社としても特性を理解いただけるよう一層努めて参りますので、来年も皆様からのレベルの高い作品のご応募を期待しております。 |