小泉 忍 |
ファッショングッズ部門グランプリの「アテナ」は表現が伝わりやすく世界観がよく出ています。また細かい計算がされており、足の動きに沿わせるのは難しいのですがこの作品はよくできています。また皮の染色も丁寧にされ使用素材の選び方も計算されています。この作品の世界観とトータルコーディネートを見てみたいような世界が広がる作品です。これからもファッショングッズ部門については学生の皆さんらしい若さと観点で生み出したアイデアであっと驚かせてほしいです。アイデアだけでなくディテールやフォルムをバランスよく形にすることがデザイナーの仕事ですが、新しい驚きをたくさん第三者に与える作品であるほど魅力的です。
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三原 英詳 |
今回のファッショングッズ部門は、コンセプトはあるものの表現をやりすぎる、ものを作っているのではなく単なる形にしただけのいわば「張りぼて」のような作品も多く見受けられました。一方、受賞作品は作り手の葛藤やプロセスが感じられるものでした。ものは人に感動を与えるものであり、自己満足ではなく自分の分身です。アイデアは面白いのですがもっとディテールまで気を配る必要があるのではないでしょうか。作品に魂を込めて細かいところまでこだわり形にしたことで我々を感動させたものが今回の受賞作だと思います。モチーフが判りやすいものがこのアワードでは多く応募されてきましたが、ファッショングッズ部門優秀賞の「Uovo」は鳥や卵を露骨に出すのではなく絶妙なバランスでポイントを押さえた表現が綺麗にできています。またファスナーを開いたときの中の膨らみで卵のやさしさや親鳥の強さも表現できています。
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山下 隆生 |
軽量性が今の時代は重要ですが、アパレル部門優秀賞の「海の星」はレイヤードを用いたのに軽いだけでなくとてもかわいい色彩で目を惹きました。YKKファスナーでつなぎ合わさって未来へのシルエットを形づくられている。ベストを脱いだワンピースの形もとてもシルエットが美しく表現できています。ファッションは「情報」だと思います。暗いニュースがあふれている中、皆さんはいろいろな思いで作品を作ったと思います。黒ベースの作品も非常に多かった中で、受賞作は色に溢れていて、YKKファスナーが持っている機能を活かして美しく新しい未来のフォルムを生み出しています。明るくみんなに希望というメッセージを与える作品を今回は高く評価しました。そして「ファッションができることは夢を持つこと」とのコンセプトでグランプリを選びました。 |
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ハン アンスン |
ファッショングッズ部門審査員特別賞の「WAVE COLOR NECKLACE」は、とてもインパクトがあり存在感もある作品でした。ファスナーと皮の使い方が新しく、色の組み合わせも評価が高かったです。他に注目したグッズ作品としては形状保持ファスナーを使用した帽子「自由自在」。あっと驚くアイデアで楽しい作品でした。また「Jelly fish」はかわいらしいだけでなく完成度も高く、女性からは特に評価が高い作品でした。
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木下 美伽 |
アパレル部門審査員特別賞の「ACTION CHECK LAYER」はおそらくファスニングアワード初のスポーツテイスト作品の受賞でしょう。色使いがきれいで、面ファスナーを使用しポケットの位置が動くなど工夫されているだけではなく、重ねているのに軽く見える、ブルマやコンパクトブルゾンスタイルにすることでバランスよくできている秀作だと思います。他に注目したアパレル作品としては「SUPER BIG T-Shirts」。色使いがとても綺麗で、"エクセラ"の金色とマリンブルーが合っていました。また、子供服「SNOW GIRL」は個人的に非常にかわいらしく感じただけでなく、ふわふわなニットにきらびやかな"エクセラ"を使っておりチャーミングでした。今年は全体的に色が明るくチャーミングで、見ていてほっとする作品が受賞していますが、暗い事件・ニュースがたくさんあった年だからこそ、明るく、夢を見させてくれるものの評価が高かったのではないかと思っています。
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藤田 恭一 |
アパレル部門グランプリの「副資材の装飾」は自然をよく理解し異国の文化をきちんと勉強している作品です。フォルムやバランスがとてもよく、ハードさとナチュラルなもののバランス、ボリュームと着丈のバランス、装飾としてのグラフィックの完成度が非常に高い。加えてウエストのベルトがバッグに変身するという機能も有しています。今年を代表する素晴らしい作品だと思います。
ファッショングッズ部門YKK特別賞の「Week Bag」の特徴はひとつのバッグが7つに変わるという「機能」ですが、個数の問題ではなくそれぞれミニマルな完成度が高い作品です。またYKK付属品を使用するという点でデザイナーのセンスや感性が素晴らしい作品だと思います。我々デザイナーはアーティストではなく、人々の生活をサポートする義務があると思っています。洋服はただ見せるためのものではなく、身体を守るものですが、そこに感性とセンスを盛り込むことが必要です。このアワードに応募する際は楽しいスタイリングと機能に加えYKKの付属品を加味してデザインしてほしいです。また自然と共存し文化に学ぶことが必要です。五感で感じて、自国の文化を再度考えて自分に何ができるかを盛り込んだ作品であって欲しい。加えて「ファンタジー」を持ってもの作りに取り組んでください。ファンタジーがなければ人の心を動かすことはできないと思います。是非作った時の気持ちを忘れないでください。
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YKK株式会社 代表取締役社長 猿丸 雅之 |
若い皆さんの作品の完成度が高く圧倒されました。アワード開始当初は対象アイテムをとにかく多く使うという作品が一部見られ、その後はファスナーやボタンの開閉や組み換えで形が変わるもの、いわゆるトランスフォーメーションする作品が流行した時代がありました。回を重ね今回のようにYKKのファスナーやボタンなどの付属品の本来の機能を十分理解しそれを活かした作品が多くなったことは部材メーカーである弊社としては大変うれしい限りです。対象アイテムとして新商品をいくつかご紹介しましたが、閉め具である付属品がもつ特性、そしてサプライヤーである弊社が意図している開発目的を理解して頂いた上で、作品作りに活かしていただければと思います。改めて本年も多くの作品をご応募頂き誠にありがとうございました。来年も数多くの作品を期待しています。
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