パッシブタウン第5街区 竣工
2025年03月12日
YKK不動産株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:志水宏朗)は、2023年9月に着工したパッシブタウン第5街区(富山県黒部市)の竣工式を本日、黒部市長 武隈 義一様、設計者 Hermann Kaufmann(ヘルマン・カウフマン)氏をはじめ工事関係者ご列席のもと執り行いました。
パッシブタウン※1は持続可能な社会にふさわしいローエネルギーの「まちづくり・住まいづくり」を提案する取り組みです。全5街区からなり、第1~第3の前期街区はパッシブデザインを採用し、黒部の風や地下水などの自然エネルギーを活かしたサステナブルな住空間を探求。後期街区(第4~第5街区)では前期街区で得た知見をもとに、地域産木材と再生可能エネルギーを活用した脱炭素に挑戦しています。
第5街区は、地域の森林資源を最大限活用した北陸初の木造中高層集合住宅とし、太陽光発電に加え、住宅3棟のうち1棟に集合住宅としては日本で初めて水素エネルギー供給システムPower to Gas(P2G)※2を実装。再生可能エネルギーをシーズンシフトさせることにより、カーボンニュートラルの実現とグリーンエネルギーによる自立したまちづくりをめざしています。
<ポイント>
① 地域森林資源の最大活用と伐採跡地への植林により建設時のカーボンニュートラル実現をめざす
・富山県産木材を最大限に使用し、コンクリート部分にも出来る限り低炭素型の「ECMコンクリートⓇ」※3を採用することで建設時のCO2排出量を大幅に削減。さらに完成した木造住宅を長く使いCO2を長期間固定することを加えると、建設時に排出されるCO2排出量は、同規模のRC造集合住宅に比べ※4、約半分※5となる見込み。
・使用木材の87%を富山県内から調達し、2023年9月 富山県東部の伐採跡地にスギの苗木200本を植樹、草刈りなどの育林活動を継続的に実施しています。植樹した木が成長し、CO2を吸収することで建設時のカーボンニュートラル実現をめざしています。
② パッシブデザインと再生可能エネルギーを活用し、住宅棟 運用時のCO2排出量を削減
・これまでの街区で収集した室内外環境の実測データをもとに、外壁・柱・梁などの部材で熱橋や内部結露が起こらない断面設計とし、本物件仕様のYKK APトリプルガラス木製窓「APW 651」採用により、高気密・高断熱の室内環境を実現し、外皮平均熱貫流率※6Ua値0.23を達成。
③ グリーンエネルギーによる自立型集合住宅の実現
・P2Gを備えた住宅棟においては、余剰電力をシーズンシフトすることでエネルギー自給率は95%になると予測。災害時は地域の防災拠点として活用できるよう整備を進めてまいります。
パッシブタウンの集大成となる第5街区では、自然採光、自然換気などパッシブデザイン採用による省エネと太陽光を活用した創エネ、P2Gの導入で可能となった季節を超えての蓄エネにより、資材調達から解体・廃棄に至るまでのライフサイクル全体で排出されるCO2排出量は、同規模のRC造集合住宅に比べ、約60%※5減となる見込みです。
<YKK不動産株式会社代表取締役会長 𠮷田忠裕 コメント> ※𠮷田忠裕の「𠮷」は「土」です。
2019年から取り組んできた第5街区が、コロナ禍を経て竣工の日を迎えたことを大変感慨深く思います。これでパッシブタウン全街区が完成しましたが、建てて終わりではなく、第5街区についても室内環境やエネルギー消費量の実績データを収集し、有識者の方々に評価・検証していただきその結果を公表します。できるだけエネルギーを使わずに黒部という地域の特性を活かした快適な住まいを提案する。われわれがこの挑戦で得た知見や経験が、日本だけでなく世界にも広がり活用されていくことを願っています。
※1 パッシブタウン https://www.passivetown.jp/
※2 再生可能エネルギーの余剰電力を活用し、水の電気分解により水素を生成し、これを貯蔵し、利用する技術。
※3 参考URL https://www.takenaka.co.jp/solution/environment/ecm/
※4 J-CAT(Japan Carbon Assessment Tool for Building Lifecycle)2023年度報告書に掲載されているRC造集合住宅算定事例との比較
※5 集合住宅脱炭素化評価技術研究部会 算定による暫定値
清家剛氏(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授)を部会長とし、委員に堀祐治氏(富山大学 都市デザイン学部 都市・交通デザイン学科 教授)、磯部孝行氏(武蔵野大学 工学部 サステナビリティ学科 准教授)が参画。建物のLCAと持続可能性を国際的な評価法で第三者的に評価し、その効果と課題を広く伝えることにより技術の進展に貢献することを目的とする。
※6 壁や窓など建物の外皮を介して熱がどのくらい逃げやすいかを示す数値(低いほど断熱性能が高い。)
別紙
パッシブタウン第5街区の概要については別紙をご覧ください。