YKK株式会社 2024年度 連結決算のポイント

2025年05月14日

I.YKKグループ連結業績
 当期における日本経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策のもとで緩やかな回復基調となりましたが、エネルギーコスト高や円安傾向継続による物価の上昇、人手不足等による人件費の上昇が続きました。世界経済は、全体としては底堅く推移したものの、各国の政権交代による政策動向やウクライナ、中東地域等の不安定な国際情勢といった様々な不透明要因があり、資源価格や為替相場等とともに、引き続き注視していく必要があります。
 このような環境のもと、当期は当社グループ第6次中期経営計画(2021年度~2024年度)の最終年度として、中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」のもと、第6次中期事業方針として、ファスニング事業では「新常態下での持続的成長~多様な顧客要望の実現と顧客創造~」、AP事業では「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」を目指し、それぞれの事業を推進してまいりました。当期においても不安定な世界情勢やインフレ等が継続しており、市場環境は好転していない中、当社グループにおいては、人件費及び材料価格の高騰への対応や円安の進行等が業績に影響しました。
 その結果、当期の連結業績は、売上高は過去最高の前期比8.5%増の9,982億円、営業利益は前期比13.0%増の624億円、経常利益は前期比15.6%増の703億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比25.0%増の529億円となりました。


Ⅱ.事業別連結業績
(ファスニング事業)
 当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、アパレル小売市場においては2022年度来高止まりしていた在庫水準が適正な水準に戻りつつあるものの、世界的な物価高騰やエネルギー価格の上昇、欧州や中国経済の停滞、アメリカの政権交代による世界経済への影響等、景気の先行き不透明な状況が続きました。
 このような事業環境のもと、顧客要望納期対応をはじめとした施策の奏功により、ISAMEA(India/South Asia/Middle East/Africa)、ASEAN、中国地域における販売が好調に推移し、更に為替が前年同期比で円安に推移したことにより、増収となりました。
 地域別では、日本地域においては、海外事業会社の好調によるグループ会社向け輸出販売の増加及び円安進行によるロイヤリティ収入増加による増収効果がありました。Americas地域においては、需要減少に伴う官需分野向け販売が低迷したものの、ジーンズ分野向け販売が回復しました。Europe地域においては、ジャケットや鞄等の高級分野におけるブランドホルダーの販売不振により販売が低調に推移しましたが、トルコ社でのトルコリラ安の為替影響とジーンズ好調による増収効果がありました。ISAMEA地域においては、加工輸出向け販売が好調に推移したことに加え、インド社で内需市場向け販売が好調に推移しました。ASEAN地域においては、スポーツアパレル分野をはじめとした加工輸出向け販売が好調に推移しました。中国地域においては、加工輸出向け販売及び内需市場向け販売が好調に推移しました。
 その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、過去最高の前期比14.2%増の4,331億円となりました。営業利益は、材料価格の高騰や人件費の上昇等の減益要因があったものの、販売ボリュームの増加及び操業度向上に加え、継続的なコストダウンの実施、為替影響等の増益要因により、前期比42.6%増の475億円と、増収増益となりました。


(AP事業)

 当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本においては、資材価格高騰や円安の進行を受けて住宅価格の高騰が継続し、新設住宅着工戸数は減少しました。3省連携補助事業による省エネ改修需要は、緩やかな伸長となりました。海外においては、北米ではビル建材市場は不動産市況の悪化の継続により縮小、住宅建材市場は住宅ローン金利の高止まりにより住宅着工は減少しました。中国では住宅購入規制緩和策が拡大されたものの市場は縮小、台湾では好調な半導体輸出を背景とした景気回復により住宅着工は増加、インドネシアでは住宅購入税制優遇の景気刺激策により住宅着工は増加しました。
 このような事業環境のもと、日本においては、住宅事業では、リフォーム商品に加えて高断熱窓化の更なる推進や、開口部商品とエクステリア商品等の同時提案による販売拡大に取り組んだものの、販売は前期を下回りました。ビル事業では、新築・改装分野ともに販売を拡大しました。海外においては、北米ではビル建材・住宅建材ともに販売が前期を上回りました。中国では内需における中級住宅市場での拡販により、台湾では順調な物件施工進捗により販売が前期を上回りました。インドネシアでも中級上位向け商品等の拡販により販売が好調に推移しました。
 その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、4期連続で過去最高を更新し、前期比4.4%増の5,616億円となりました。営業利益は、日本における原材料・資材価格の高騰や販管費の増加等を販売増加や価格改定、製造コストダウン等により吸収できず、前期比29.3%減の181億円と、増収減益となりました。