YKK株式会社 2023年度 連結決算のポイント

2024年05月15日

I.YKKグループ連結業績
 当期における日本経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策のもとで緩やかな回復基調となりましたが、世界的な金融引締めを受けたインフレや円安の進行等の影響を受けて、幅広い品目で価格上昇が続きました。世界経済においては、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化といった不安定な国際情勢に加え、中国経済の先行き懸念など様々な不透明要因があり、各国の金融政策や為替相場の動向を含め、引き続き注視していく必要があります。
 このような環境の中、第6次中期経営計画(2021年度~2024年度)の3年目である当期は、経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」のもと、第6次中期事業方針として、ファスニング事業では「新常態下での持続的成長~多様な顧客要望の実現と顧客創造~」の実現を、AP事業では「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」を目指し、それぞれの事業を推進してまいりました。前期は不安定な世界情勢やインフレ等の世界経済失速の影響を大きく受けましたが、当期も状況は好転することはなく、特にファスニング事業においては市中アパレル在庫の高止まりが強く影響しました。一方で、原材料・資材価格の高騰の影響に対する適切な価格改定の実施、及び、円安による増収効果もありました。
 その結果、当期の連結業績は、売上高は前期比3.0%増の9,202億円、営業利益は前期比1.3%減の552億円、経常利益は前期比0.2%増の608億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比11.7%増の423億円となりました。

Ⅱ.事業別連結業績
(ファスニング事業)
 当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、ロシアのウクライナ侵攻継続、中東情勢の悪化等の地政学リスクの顕在化や世界的なインフレ、金融引締めの継続、中国不動産市場の低迷等の影響により景況感が悪化し、市中のアパレル在庫が高止まりしました。
 このような事業環境のもと、顧客希望納期対応による新規顧客の獲得や適切な価格改定を実施したものの、市況低迷の継続とアパレル顧客の在庫調整の影響を受け販売ボリュームが減少したことにより、減収となりました。
 地域別では、日本地域においては、円安進行によるロイヤリティ収入の増収効果があったものの、グループ会社向け輸出販売が大きく低迷しました。Americas地域においては、車両部材分野及び官需分野向け販売が堅調に推移したものの、ジーンズ需要低迷の影響を受けました。Europe地域においては、ジャケット分野向け販売の不振や顧客の在庫調整に伴い販売が低調に推移しました。ISAMEAIndia/South Asia/Middle East/Africa)地域においては、加工輸出向けが回復基調となり販売ボリュームは前期並みとなりました。ASEAN地域においては、スポーツアパレル分野をはじめとした加工輸出向け大手顧客の在庫調整の影響等により販売が低調に推移しました。中国地域においては、加工輸出向け顧客の販売低調が続いたものの、内需向けは堅調に推移したことや、前期はゼロコロナ政策により経済活動が停滞した影響で販売が低迷したことから、対前期で販売が増加しました。
 その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、前期比0.3%減の3,793億円となりました。営業利益は、継続的なコストダウンの実施や円安による増益効果があったものの、販売ボリュームの減少や操業度の低下等の影響により、前期比23.8%減の333億円と、減収減益となりました。

AP事業)
 当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内においては、円安の継続等による資材価格の高止まりなどの影響を受けて住宅価格の高騰が継続し、新設住宅着工戸数は前期を下回りましたが、政府の3省連携補助事業により省エネ改修需要が高まりました。海外においては、北米ではビル建材・住宅建材市場ともに金利の高止まりによる不動産市況の悪化により着工が減少しました。中国では不動産購入規制緩和策が打ち出されたものの住宅購入意欲の低迷が継続し、台湾では住宅投機抑制策により市場が落ち込みました。インドネシアでは金利の高止まりにより住宅着工は前期を大きく下回りました。
 このような事業環境のもと、日本国内においては、内窓を中心に住宅リフォーム及びビル改装分野で販売が大幅に伸長しました。住宅事業では、リフォーム商品に加えて、樹脂窓・アルミ樹脂複合窓による高断熱窓化の更なる推進等により販売を拡大しました。エクステリア事業では、市場が低調の中でカーポート・門扉は販売が増加したものの、事業全体では前期を下回りました。ビル事業では、新築・改装分野ともに受注・販売を拡大しました。
 海外においては、北米ではビル建材・住宅建材ともに販売が前期を下回った一方、中国では内需における中級市場の新規顧客開拓により販売が好調に推移しました。台湾では集合住宅市場での拡販と中南部地域への営業強化により増販となり、インドネシアではノックダウン商品の拡販と新規チャネル開拓により販売が前期を上回りました。また、タイにおいて202312月にカーテンウォールメーカーであるYHS International Ltd.及びその製造会社であるSiam Metal Co., Ltd.の株式を取得し、連結子会社化しました。
 その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、3期連続で過去最高を更新し、前期比5.8%増の5,381億円となりました。営業利益は、国内における原材料・資材価格の高騰や販管費の増加等を販売増加や価格改定、製造コストダウン等により吸収し、前期比43.4%増の256億円と、増収増益となりました。