YKK株式会社 2022年度 連結決算のポイント

2023年05月15日

I.YKKグループ連結業績
 当期における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の厳しい行動制限が緩和され、経済社会活動の正常化が進んだ一方で、円安の加速や資源価格の上昇に伴い、エネルギーや幅広い品目での価格上昇が続いております。世界経済においては、ウクライナ情勢や中国のゼロコロナ政策及びその転換により大きな影響を受けましたが、引き続き、ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー問題やサプライチェーンへの影響、各国におけるインフレの加速、金利上昇など様々な要因があり、先行きが不透明な状況となっております。
 このような環境の中、第6次中期経営計画(2021年度~2024年度)の2年目である当期は、前中期から継承する中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」のもと、第6次中期事業方針として、当社では「新常態下での持続的成長~多様な顧客要望の実現と顧客創造~」の実現を、YKK AP㈱では「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」を目指し、それぞれの事業を推進してまいりました。前期はファスニング事業を中心に大きく業績を回復した一年でしたが、当期は前期からの資材価格高騰を受けての価格改定や急激に進行した円安の影響があったものの、特に後半にかけて不安定な世界情勢やインフレ等の世界経済の失速の影響を大きく受けました。
 その結果、当期の連結業績は、売上高は前期比12.1%増の8,932億円、営業利益は前期比7.0%減の559億円、経常利益は前期比5.1%減の606億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比14.0%減の379億円となりました。

Ⅱ.事業別連結業績
(ファスニング事業)
 当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、上半期においてはアパレル小売市場の回復基調が持続しましたが、ロシアによるウクライナ侵攻や中国におけるコロナ政策などによる市場不安定化、燃料価格高騰、世界的なインフレの加速及び金融引締めにより、下半期にかけて景気の先行き不透明感が高まりました。これを受けて、欧米を中心としたアパレル小売市場では需要減退とともにアパレル小売在庫が増加しました。
 このような事業環境のもと、市況悪化及び顧客の在庫調整の影響を受け、販売ボリュームが減少したものの、インフレに伴う適切な価格改定の実施及び期中の大幅な円安の影響により増収となりました。
 地域別では、日本地域においては、グループ会社向け輸出販売が低迷したものの、国内販売においてスポーツ分野やユニフォーム分野が好調に推移しました。また、円安進行による増収効果がありました。Americas地域においては、ジーンズ需要低迷の影響を受けた一方でインフレを踏まえた適切な価格改定を実施しました。Europe地域においては、ジャケット分野及び高級鞄分野向け販売が好調に推移しました。ISAMEAIndia/South Asia/Middle East/Africa)地域においては、インドを中心に内需市場の回復が見られましたが、Americas地域同様ジーンズ需要低迷の影響を受けました。ASEAN地域においては、スポーツ分野や鞄分野が好調に推移したものの、下半期においては顧客の在庫調整の影響を受け販売が減少しました。中国地域においては、上半期にコロナ感染者数拡大による上海市他でのロックダウンにより生産活動が停滞した影響で販売が減少しました。
 その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、前期比9.3%増の3,805億円となりました。営業利益は、販売ボリュームの減少及び操業度の低下に加え燃料価格高騰やインフレの影響を受けたものの、原材料価格高騰に対する適切な価格改定の実施や継続的なコストダウン、円安進行による為替影響などの増益要因により、前期比3.2%増の437億円となりました。

(AP事業)
 当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内においては、資材価格の高騰や住宅設備の納期遅延等の継続によって、新設住宅着工戸数は前期より微減となりました。海外においては、北米ではビル建材市場は新型コロナウイルス感染症の影響からの経済活動の回復により堅調に推移しましたが、住宅建材市場では住宅価格の高騰や住宅ローン金利上昇により新設住宅着工戸数が減少しました。中国では不動産規制の影響に加え、同感染症によるロックダウンやゼロコロナ政策緩和後の感染拡大により、不動産市場は大幅に縮小、台湾では建設現場の人手不足が継続し新設住宅着工戸数は前期並み、インドネシアでは同感染症の影響からの経済活動の回復により新設住宅着工戸数は回復傾向となりました。
 このような事業環境のもと、日本国内においては、ウィズコロナにおける取組として、同感染症の状況を把握しながらオンラインイベントやWEB展示会等と併せて、リアルイベントを再開することで営業・消費者接点の強化を図ってまいりました。住宅事業では、樹脂窓とアルミ樹脂複合窓による窓の高断熱化の推進により、高断熱窓化率を75%まで高めることができました。エクステリア事業では、カーポート、門扉・フェンス等の提案を強化しました。ビル事業では、販売拡大に向けて新築営業の体制強化と大規模修繕工事等を中心とした改装分野での提案強化を進めてまいりました。
 海外においては、北米のビル建材では東海岸の販売が好調に推移し、中西部・西部ではサービス強化に取り組み、住宅建材では、受注増加により納期遅延が生じていた樹脂窓について納期回復施策を実行することで販売が増加しました。中国においては、中級市場商品による新規顧客開拓と改装チャネルの拡大により販売が増加しました。台湾では高級住宅市場において販売が好調に推移するとともに、中南部地域の開拓に取り組みました。インドネシアでは新規チャネル開拓と新商品投入により販売が増加しました。
 その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、過去最高となる前期比13.9%増の5,086億円となりました。営業利益は、日本国内では資材価格の高騰や販管費の増加などの影響を販売増加や価格改定、製造コストダウンの増益要因により全て吸収することができず減益となりましたが、海外では販売増加や価格改定などの影響が大きく増益となり、全体では前期比2.8%増の178億円となりました。