YKK株式会社 2020年度 連結決算のポイント

2021年05月14日

I. YKKグループ連結業績

 当期は2017年度にスタートした当社グループ第5次中期経営計画の最終年度として、中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」のもと、当社では第5次中期事業方針である「『ものづくりの進化と革新』~Standard向けのYKKものづくりへの挑戦~」の実現を、YKK AP(株)では「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」の実現を目指し、それぞれの事業を推進してまいりました。しかし、新型コロナウイルス感染症により国内外経済の停滞が長期化した影響は大きく、当期後半にかけて徐々に業績を持ち直したものの、次期中期経営計画に多くの課題を繰り越す形となりました。
 その結果、当期の連結業績は、売上高は6,537億円(前期比10.8%減)、営業利益は263億円(前期比36.3%減)、経常利益は301億円(前期比29.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は173億円(前期比26.6%減)と、第5次中期経営計画で掲げた目標値から大きく乖離した業績となりました。

II. 事業別連結業績

(ファスニング事業)

 当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の自粛と、それに伴うアパレル業界を中心とした大幅な市況悪化の影響を受けました。また、世界各地でのロックダウンにより、一部の海外事業会社では工場の操業停止等を余儀なくされました。夏以降の各国の経済活動再開に伴い、アパレル業界や自動車業界の緩やかな回復が見られたものの、感染症の再拡大により欧州等で再度のロックダウンが行われ、厳しい環境が継続しています。
 このような事業環境の下、生活必需品を取扱う量販店への取組の強化や、いち早く感染症を抑え込んだ中国内需市場に対しての積極的なアプローチを行いましたが、各国の市況低迷を受けアパレル分野向け販売が低調となりました。また、人々の移動が制限される中、旅行産業も大きく落ち込み、鞄分野の販売も低調な結果となりました。
 地域別でも、全ての地域において減収となっており、厳しい結果となりました。日本では、ファスニング事業全体の販売低調により材料供給等のグループ会社向け販売が減少しました。北中米では、ジーンズ分野向けを中心に販売が減少しました。EMEA(欧州・中東・アフリカ)では、ロックダウンの影響により高級鞄やアパレル向けなど全般的に低調な販売となりました。アジア地域(中国・日本を除く。以下、同じ。)では、日欧米向けの加工輸出市場での販売や、ロックダウンの影響によりインド・インドネシア等内需市場向け販売が低調となりました。中国では、他国に先行した経済活動再開の中、唯一内需市場向け販売を伸ばしましたが、加工輸出市場向け販売が厳しく、全体では低調となりました。
 その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は前期比18.2%減の2,471億円となりました。営業利益は、不急な費用の繰り延べ・削減、コストダウン施策の積み増し、投資抑制等の増益要因があったものの、市況低迷に伴う販売ボリュームの減少及び操業度の低下による減益要因が大きく、前期比52.1%減の173億円となりました。

(AP事業)

 当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、住宅購入に対する消費マインドの低下と建築現場の遅延や中止もあり、新設住宅着工戸数は前年割れとなりました。海外においては、北米では、住宅建材は着工戸数が郊外で増加し前年超えしたものの、主力のビル建材は感染症拡大の影響により市場が大幅に下落しました。中国では、感染症は早期に収束したものの、ターゲットである超高級市場が中高級市場に比べて低迷、台湾では、高級集合住宅の市場は好調に推移、インドネシアでは、感染症拡大の影響により住宅市場は厳しい状況が継続しました。このような事業環境の中、第5次中期事業方針として掲げた「高付加価値化と需要創造によるAP事業の持続的成長」のもと、事業を推進してまいりました。
 日本国内においては、新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛の中、新たな営業活動としてオンライン情報発信「RELATIONS NEXT『窓で、安心。』」をテーマとするフォーラムやWEB展示会を開催してまいりました。住宅事業では、高断熱化推進により樹脂窓の販売を伸ばし、高断熱化率を67%まで高めるとともに、防災需要により窓シャッターリフォームが伸長しました。ビル事業では、個別防火商品の拡充と供給力強化を進めてまいりました。海外においては、北米主力のビル建材やアジア地域において、同感染症拡大の影響の長期化により販売が落ち込む一方で、北米では、2019年12月に全株式を取得したErie Architectural Products Groupによる販売増加や住宅建材が好調で過去最高の販売となりました。また、2020年9月に海外事業会社をYKK AP(株)の子会社に再編し、資本と事業運営を一本化したことで、スピードを持った経営体制を整えました。
 その結果、国内外ともに新型コロナウイルス感染症拡大の影響による販売減少で、AP事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、前期比5.4%減の4,028億円となりました。営業利益は、国内では製造コストダウンや原材料・資材価格の低下、販管費の削減による増益要因があったものの、販売減少や市場競争の激化により減益となり、全体では前期比7.3%減の211億円となりました。