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【It's Not Just A Zip #03】水資源問題に取り組むファッション業界の動きとは?

2020年2月25日

ファッション業界と水資源

ファッション業界が環境に与える問題として、しばしばメディアが取り上げるのが水資源への影響。中でも染色は、環境に大きな負荷を与え得る製造工程と考えられています。また染色のみならず、漂白や染色後の洗浄、エイジングなどの仕上げ加工でも、大量の水が用いられます。
また、2030年には人口の増加の影響で、世界における水の使用量は40%以上も増えると予測されており、水を巡る獲得競争もますます加速するだろうと予見されています。
ちなみに地球上には13.8億立方キロメートルの水がありますが、その大半は海水。すぐに使える淡水はわずか0.01%ほどしかありません。たとえば地球上のすべての水を競泳用50mプールに置き変えて考えた場合、使用できる水の量はわずかバケツ10杯程度。この大切な資源を持続可能なものとするためにも、ファッション業界は環境問題に積極的に取り組む必要があります。

水資源の利用削減に向けた業界の取組み

この問題に対して、染色や仕上げ加工の段階で水の使用を抑える技術が開発されています。コペンハーゲン ファッションサミット2018において、その画期的な技術力を評価されたColorZenは、綿繊維に前処理を施すことで染色時の染まりやすさを向上。それにより染色時の水の使用量を90%も抑えることに成功しています。
また、環境へのダメージが大きいとされるデニムのエイジング加工においても、新しい技術が開発されています。Jeanologiaの技術はレーザーやオゾン、極小の泡による技術で水の使用量を極力抑えた加工を実現。最新の技術では1製品の加工に対してコップ1杯の水での加工が実現できていることを発表しました。

技術だけでなく、業界全体での取り組みも進んでおり100以上(2018年時点)のファッションブランドや組織が参画しているZDHCは有害化学物質の排出をゼロにするという大きな目標の他、水資源への影響を少なくするために、統一した規制ガイドラインを発表。水資源への負荷軽減対策においては、それまで複数の環境基準が存在していましたが、ガイドラインを統一することで、より多くの企業が負荷軽減へ取り組みを推進できる状況を整えることができました。

水資源の利用削減に向けたYKKの技術

YKKも製造時の水資源への影響をできるだけ少なくする努力を続けています。
その1つがECO-DYE®による染色技術。従来の染色工程には大量の水が欠かせませんでしたが、この革新的な技術では水の代わりに二酸化炭素を用います。まずは温度と圧力を二酸化炭素にかけ、液体と気体の両方の特徴を持つ超臨界流体を生成。これを染色の媒介に用いることで、ファスナーの製造工程全体における水の使用量を50~90%まで削減できるようになりました。

また、水の使用を抑えた金属製品の製造にも力を入れています。
染色同様、金属ボタン製造でのメッキ加工にも水を使用しますが、YKKはジーンズなどに使用する金属ボタンやリベットを金属材料の色合いを生かした表面処理仕上げを取り揃えております。この表面処理では既存の電気めっきと比較した場合、水、電気の使用量を平均60%程度まで削減可能です。
さらに加工前の工程で使われる洗剤や薬品も削減。その他、排水のろ過や洗浄する装置には、クルミの殻を砕いた媒介を利用するなど、廃棄物の削減に向けたさまざまな工夫に取り組んでいます。

このようにYKKは、さまざまなアプローチで環境への負荷をできる限り減らす努力を継続。業界団体や企業、各国や地域の政府、行政とも連動し、ファッション業界全体の課題解決に向けて尽力し続けています。

  • この記事は以下を元に再校正し掲載しています
  • ECO-DYEはYKK株式会社の登録商標です