作品・受賞者へのコメント
アパレル部門 審査員特別賞
名古屋モード学園 佐野 想 SANO SO
『Epsilon』
造形は縫い合わせるもの同士の“主従関係”が非常に大切で、縫製部分の距離操作に様々なテクニックを凝らして立体的にしていくものです。この作品は、素材と付属パーツで“主従関係の中間”を生み出すことで全体を歪ませ、そして歪ませながら全体を造形するという、偏差値の高さを感じました。造形のフィロソフィーに対するアプローチとも思えるデザインストーリーで、なかなか学生にはない発想です。また造形は重力と生地表面の弾性力をうまくコントロールして、味方につけることが問われますが、編み立ててハリを出したリブの弾性力を用いることで重力に抗っており、そのアイデア、感性が素晴らしい。一方で、アウトラインのシルエットがぼやけてしまった点はあと一歩です。本来であれば1年くらいかけて向き合いながら研究を重ねるような大きなテーマ。短期間で挑戦したチャレンジ精神も称えたい。
取材協力 繊研新聞社
作品・受賞者へのコメント
ファッショングッズ部門 グランプリ
文化服装学院 西野 陽光 NISHINO ASAHI
『誕生』
5年以上ファッショングッズ部門の審査をメインに担当していますが、アワードを牽引するのはアパレル部門の場合が多く、これまで悔しい思いもしてきました。しかし、今年はそんな気持ちを吹き飛ばすほどクオリティが高く、グランプリにふさわしい作品です。この作品はバリエーションが豊富で、ただ選択するだけでなく、日によって付け替えられたり、組み合わせることができます。内面を表現するためのファッションであると同時に、着用する人が作り手のクリエイションに参加することもできるという、とても作品性の高いクリエイションです。おそらく、YKKファスニングアワードがなければファスナーでジュエリーを作ってみようとは考えないでしょう。しかしこうして、ファスナーをジュエリーに用いるというチャレンジを表現にむすびつけ、生命力のあるアイテムに仕上げたことが、大きく評価されるポイントになりました。ファッションはコミュニケーションツールでもあり、モチベーションツールでもありますが、着用する人のことを想像してその両方を実現し、成熟したクリエイションを見せてくれました。
ファッショングッズ部門 審査員特別賞
杉野服飾大学 YU YIWEN
『Squares-Cube』
遊びがあって使っても楽しい作品を、YKKのプロダクトの機能によって実現したのが評価のポイントになりました。ファッション性を兼ね備えているだけでなく、POWERHOOK®で収納スペースの付け替えや配置のアレンジができるなど、働く人のために気が利く仕様にもこだわっています。使用シーンがすぐに目に浮かんできて、作り手の丁寧な思いやりが伝わってきました。
取材協力 繊研新聞社
作品・受賞者へのコメント
アパレル部門 優秀賞
東京モード学園 石野 隼斗 ISHINO HAYATO
『ATHLETE SUIT CLIMBING』
ファッション性の高いスポーツウェアという一面だけでなく、機能性も考え抜かれていて、製品化できるクオリティの作品だと感じました。ハイキングウェアの構造を基本にしながら、ベース、ミドル、アウター3層のレイヤーで、それぞれ気象条件や寒暖差に合わせてとり外すことができ、フレキシブルに使えるよう作り込まれています。それを実現したのがYKKのファスナーです。止水ファスナーなどを適材適所で使い分けたのも高評価に繋がりました。また機能面だけでなく、エベレストや逆さ富士の情緒が感じられるグラフィックにも惹かれました。再帰反射材を用いて遭難など非常時のことも考えられていますし、コンセプトシートも、ビジュアルブックとしてもクオリティが高いです。個人的にはグランプリに匹敵する作品だと感じました。このような作品に出会えたことがすごく嬉しいです。
取材協力 繊研新聞社
作品・受賞者へのコメント
アパレル部門 グランプリ
大阪文化服装学院 敷矢 大輔 SHIKIYA DAISUKE
『回転する服』
最終審査でこの服が回転した瞬間、審査員全員が驚きの声をあげました。長年審査をするなかで、そんな光景は初めてです。それだけ規格外なグランプリ作品が誕生しました。タイヤのテキスタイルをモチーフにした力強いマテリアル、様々な変化を実現するディテール、インナーに施されたキルティングの細かいステッチワーク…。良い点を挙げるとキリがありませんが、一番はファスナーを使用する目的と方法が独創的だったこと。これまでと全く異なる、見たことのないチャレンジです。服にこだわらず、アートやプロダクトといった視野にも立ちながら、ファスナーの使用方法を考え抜きました。「つなぐ」「開ける」というファスナーの機能を前提に審査していますが、それが見事に裏切られ、YKKの「裏の裏をかいた」とも言える作品です。ファスニングにはつながっていくという意味があり、ファスニングアワードにはファスニング製品がどんどん変化・進化しながら他のカテゴリーやモノ・コト・ヒトにつながっていくという思いも込められています。そういう視点でも、まさにグランプリにふさわしい作品だと思います。
取材協力 繊研新聞社
作品・受賞者へのコメント
ファッショングッズ部門 審査員特別賞
杉野服飾大学 川合 涼花 KAWAI RYOKA
『波紋』
ファスナーやカラビナといった副資材は基本的には機能のためにあると思いますが、この作品は自分の成し遂げたいデザインや美しさのために使ったと解釈しました。ファスナーの美しい曲線が作品のテーマになっている“波紋”を表現しており、ほかの作品とクリエイティブのベクトルが異なります。クリエイティブは様々なアイデアがあってこそ生まれるもの。今後の活躍に期待です。
取材協力 繊研新聞社
作品・受賞者へのコメント
ファッショングッズ部門 優秀賞
東京モード学園 常川 遼太 TSUNEKAWA RYOTA
『Bone hand』
この作品は大きく3つの点で評価しました。まずバイヤー目線としては、カテゴリーが新鮮に映りました。過去の審査のなかでも手袋にフォーカスした作品はおそらく初めてで、着眼点がとてもユニークです。そして素材や付属の足し引きによる完成度の高さです。EVERBRIGHT®の美しいファスナーを無縫製で取り入れ、柄や、生地の伸縮性も秀逸。実際に手を通すと肌触りも良く、機能性も高いです。最後に、伝えたいことが明確でブランディングが確立されていたこと。タイトルからポートフォリオ、実際の作品までが線でつながり、しっかり伝わるストーリーです。
取材協力 繊研新聞社
作品・受賞者へのコメント
アパレル部門 YKK特別賞
上田安子服飾専門学校 白川 黎 SHIRAKAWA REI
『NAMI』
SOFIX® というテープに樹脂のスナップがついた製品は、これまでファッションアイテム向けにはあまり使われることのないという認識でした。それが作品では、SOFIX® を細かく工夫することで3次元のような立体感が表現されており、我々が思いもつかないような活用方法で感銘を受けました。
ファッショングッズ部門 YKK特別賞
文化服装学院 朱 靖心 CHU CHINGHSIN
『Metamorphosis』
ファスナーはもともとブーツ向けに開発されたという起源があります。作品はブーツからスリッパまで幅広い用途で履くことができる仕様になっており、それを実現するためにマグネット付きバックルを着用時のアシストとして、フラットシェイプバックルをベルトループとして活用したことは我々には想像もつかないような発想でびっくりしました。ファスニング製品の新しい可能性を拓いたと評価しました。
取材協力 繊研新聞社