作品・受賞者へのコメント
アパレル部門 審査員特別賞
名古屋モード学園 苗 田 MIAO TIAN
『Power to walk』
レイヤードのデザインは古今東西、コンテストではたくさん出てくるのですが、この作品の立体感のあるレイヤリング、パーツ分け、色分け、素材分け、上下を分割したパーツをファスニング製品で結合するデザイン構想など、どれもとても素晴らしいと思います。デザイン画のシルエットがあまりにも素敵だったので、そこに到達できなかったのが一点残念でした。今後とも頑張ってください。
総評
表現力やセンス、エモーション、造形のレベルなど例年以上にクオリティが高く見応えがありました。また、審査対象アイテムである付属パーツの研究からデザインが展開された作品が増え、YKKファスニングアワードの意義が徐々に浸透してきたように思います。対象アイテムそれぞれの特性をよく研究してください。重力や常識に挑戦的なデザインを望みます。
作品・受賞者へのコメント
ファッショングッズ部門 グランプリ
文化服装学院 鄭 振甫 CHENG CHEN FU
『SHIELD』
コロナ禍の変化に反応し、ファッションを通してポジティブなメッセージを発信している作品です。デザイン画やアイデアを作品として具現化することは非常に力を要する作業ではありますが、考えを具現化するという意味で作者は「操っている」と思えるほど完成度が高く、審査会では満場一致でグランプリになりました。今回の企画に最も相応しい作品であると思います。
総評
コロナ禍で学校が閉鎖され、思うように制作ができずやむを得ずプランを変更した学生さんもいらっしゃったと伺いました。そのような中でも自分の力を信じて完成までこぎつけたことは大きな成果だと思います。審査会で皆さんの作品を手に取ったときは作り手の考えや愛情が強く伝わってきました。力作揃いで、甲乙つけがたい非常にレベルの高いコンテストになりました。
ファスニング商品を活用した機能性がこのコンテストの評価の対象になっていることは言うまでもないですが、それに加えてサステナビリティが求められる世の中の流れやコロナ禍の状況などに敏感に反応し、ポジティブに作品化できていることは、参加者はもちろんのこと主催者側としても大きな財産になったと感じています。このような取り組みはどのような時代においてもとても大切なクリエイティビティだと実感しました。
作品・受賞者へのコメント
ファッショングッズ部門 審査員特別賞
文化服装学院 中島 萌 NAKASHIMA MOE
『shutter speed』
一見よくある発想かもしれませんが、その発想をどのように具現化するかが一番難しいところです。この作品は上手く形にされていて、ただ重ねるだけではなく細部に至るまで作り手の気遣いが散りばめられています。この作品を最初に見たとき、つい被ってしまいました。写真映えもしますし、ファッションショーのランウェイでも映えていましたね。非常に素晴らしい作品だと思います。
総評
今回もコロナ禍での開催で、学生の皆さんは学校にも思うように行けなかったり、生活において助けを求めることができなかったりと困難が多かったと思いますが、非常に素晴らしい作品ばかりで、嬉しいことに、審査がとても大変でした。感染症や災害という危機に面しデザインの考え方にも変化が表れていましたね。また今回は日本の伝統に目を向けている作品も多かったように思います。皆さん、おつかれさまでした。
作品・受賞者へのコメント
アパレル部門 優秀賞
東京モード学園 KIM BOBAE
『PROTECT PROJECT』
止水ファスナーを用いることでレインウェアとしての機能性をさらに高めると同時に、ファスナーを開くと通気性が確保され、シルエットも変化するようデザインされています。シンプルに見えますが、これら全てのアイデアが融合された、非常によく考えられている完成度の高い作品です。カーブを伴うパターンは縫製が大変だったはずですが、裏地やポケットのディテールなど見えない部分も丁寧に作られており、縫製が綺麗で非の打ち所がありません。
総評
YKKファスニングアワードの一番良いところはファスナーやスナップボタンなど日常的に使っているファスニング製品の機能性をデザインにどう昇華できるかを考えなければならない点です。
アパレル部門は、アイデアは面白いのに上手く形にできていない作品がいくつか見受けられる一方で、裏側の仕様まできちんと考え、気配りが感じられる完成度の高い作品もあり、その差が大きく開いたのではないかと思います。YKK製品は美しい縫製やよく気配りされた仕様においてより輝きを見せるので、デザインと作品の仕上がり、完成度の高さがより重要なコンペであると実感しました。
ファッショングッズ部門は独創的なアイデアを完成度高く形に落とし込んでいる作品が多く見られました。機能を自分のアイデアと融合させてユニークなプロダクトとして表現できたのではないでしょうか。
作品・受賞者へのコメント
アパレル部門 グランプリ
香蘭ファッションデザイン専門学校 行廣 賢太 YUKIHIRO KENTA
『Time Vortex』
誰もが知っているデニムを題材に、YKKを代表するアイテムと時間の渦というモチーフディテールを組み合わせて造形を作り出すというアプローチが、シンプルでわかりやすい作品です。可動性や着心地にも深く考えを巡らせながら、モチーフから派生する様々な構造を高い精度で実現したことに驚きました。技術だけでなくウィットも効いていて、細部に込められたデニムへの愛に心が揺さぶられました。考えが深く、意識も精度も高い、真摯な姿勢が伝わってくるグランプリに相応しい作品です。
総評
出来上がった作品の各々の仕上がりが非常に良かったと思います。この時期、人に優しさをもたらしてくれる作品にどうしても目が行ってしまいますが、その作品が無難と捉えられてしまうと、受賞作品としてはどうなのかと審査に悩む場面もありました。グッズ部門、アパレル部門ともに今年はレベルの高い作品が揃ったと思います。
作品・受賞者へのコメント
ファッショングッズ部門 優秀賞
文化服装学院 金山 大智 KANEYAMA DAICHI
『cask』
ポートフォリオからこだわりを持って作られており、実際に履いてみると履き心地が良く歩きやすい、非常に完成度が高い作品です。木型を一から制作し、相当な根気のいる作業を最後までしっかりと仕上げた姿勢を高く評価しました。最近は軽量で機能的な革靴が多く見られる中、強くて耐久性に優れた本来の革靴のあるべき姿、そしてファスナーの本来あるべきシンプルな使い方が非常に新鮮だと感じました。
総評
コロナ禍で学生の皆さんも勉強の仕方、日々の過ごし方が変容したと思いますが、そのような中でも今回はクオリティが高い作品が非常に多く集まった印象です。新しい価値観や生活様式に上手く対応し、自分のものにしている様子が見受けられました。一つ一つの細かい部分で手を抜かず、それでいて全体がよくまとまっている作品が多かったです。世の中のエコやサステナブルの要素を取り入れていることも素晴らしかったです。
作品・受賞者へのコメント
アパレル部門 YKK特別賞
文化服装学院 石川 泰生 ISHIKAWA TAISEI
『SEA BALL~KAIHOU~』
作者が名付けたタイトルに相応しいエレガントで美しい作品です。無数のアイレットワッシャー(リング状のパーツ)をドレスの土台に打ち込み、その穴を通して内側から表側に生地を出すことで美しいフリルを形成しています。このようなアイレットワッシャーの使い方を私たちは初めて拝見しました。創造性、クオリティの高さに感動いたしました。素晴らしい作品をありがとうございました。
ファッショングッズ部門 YKK特別賞
専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ 竹井 雅孝 TAKEI MASATAKA
『Gen-Z』
靴本体に防水性の高い皮革を使用し、撥水性のあるAquaGuard® メタリック調フィルムを付け替えパーツの接合部分に用いることでプロダクト自体の防水機能を高めています。機能性向上のためにファスナーを活かしていただいた作品です。すぐに履いてみたくなるほど非常に完成度が高く、曲線部など細部まできめ細やかに縫製されており、審査員一同感動いたしました。
総評
長引くコロナ禍でYKKファスニングアワードを継続して良いのかと非常に悩んでおりましたが、閉塞感のある社会においてこそより多くのクリエイターの方にご参加いただきたいと今年も開催を決めました。その結果、7,879点ものご応募をいただくとは思いもよりませんでした。沢山のご応募を本当にありがとうございました。
コロナ禍を通じて私どもが感じているのは、大量にものをつくって大量に消費あるいは処分するような世の中ではなく、一着一着、一つ一つ、心から気に入った製品を大切に使っていく世の中に必ずなっていくということです。微力ではございますが、YKKファスニングアワードを通して新しい時代に合った製品をクリエイトされる方が一人でも多く誕生されていれば嬉しい限りでございます。来年も必ずこの企画は継続いたしますので、本年度以上に多くの学生の皆様からご応募いただけることを心から願っております。