作品へのコメント
『Knit and ruffle』
この作品は、東欧や北欧のような異国感の漂うほっこりとした作品。何よりも一番よくできていると思ったのが、ファスナーの直進性をキープしながら、そこに曲線のあるラッフル布を叩き表現すること。これはありそうでなかったデザインだと思い、そのアイディアに感動しました。また、しっかりとニットの編み柄を表現するために、ソフィックス®を使用するなどYKK商品の工作がなされており、それがデザインに反映されている良いデザインだと思いました。
作品へのコメント
『youth -P.Juliana-』
意外とこの作品のようにデザイン機能が両立されている作品が少なかった中、彼女の作品は2WAY仕様で変化があり非常に面白い。既存の靴の中にもそのようなものもあるが、ファッションというのはモチベーションツールであり、今日の気分によって形を変えられたり、一日の途中で形を変えられたりできるこの作品のアイディアを評価しました。
作品へのコメント
『Possibility』
この作品はスポーティーな要素が凄く強いが、サテンなどのエレガントな素材を使い、普通のスポーティーではなくエレガントに昇華しています。そういった新しさを生み出していることが大きく評価された点です。また、YKKの商品をところどころに使用し、それらは主張しすぎず美しくまとまっており、作品の完成度を高める要素となっていたと思います。
作品へのコメント
『トランスフォーマーコート』
この作品がなぜ、他にもある作品の中で(1番)良かったのかなと、自分で考えるために、まずこの作品をリサーチしてみました。見えてきたのは、この作品に込められる作者の明快な想いとそれを組み立てるプロセス。マテリアル・アイテム・機能性のチョイスの背景、そして何より作品を覆う「うろこ」のチョイス。「うろこ」を辞書で引いてみると"魚類や爬虫類などの身体を保護するために体表を覆う薄片"と出てきます。それは身体を護るだけでなく、動きやすさも必要と考えます。うろこから派生して「鱗紋」という言葉がありますが、この作品には鱗紋のような心を込めたミシンステッチが、このうろこ一つ一つに丁寧に施されていることで、作者の言う「存在感のある唯一無二のウェア」に仕上がったと思います。
一つの作品を作り上げる時には、作品に迷いがあってはいけない。この作品は、作者のプロセスが良く見えているため、迷いのない気持ちを全力投球したというのが伝わってきます。「あれも、これも」と付け加えてしまう作品が多く、よく出ることも勿論あるが、数多くの作品の中で、このような明快なものが目に留まります。そういう意味で、この作品が一番すんなり入ってきた作品です。非常に力強く良い作品だったと思います。
作品へのコメント
『遊ぶ』
ショーだけを見ると作品の表面的なものしか見えませんが、今回のこのグランプリの作品は、まずポートフォリオや作品を梱包している箱から凝っていて、私たち審査員の想像力を掻き立てるようなものでした。審査員に見せること、ショーで皆さんに見せることを意識したストーリー性が伝わり感動しました。縫製は勿論一つ一つ丁寧で、ここでは表現し切れないほど仕組みがある非常に考え込まれた作品です。ここに達成するまで、幾度の試作を繰り返し、多くの壁を打ち破ったプロセスが感じられます。段階を経て今後、持つ人がより綺麗に見えるようなものづくりも意識すると、更に良いものになっていくと思います。昨年グランプリが出ず、申し訳ない気持ちが自身にもありましたが、昨年ここでお話したことを学生や先生方が考えてくださり、今年に挑んでくれたのだと作品やポートフォリオから感じました。今回特にファッショングッズ部門の作品に作者の強い想いやエネルギーを感じるものが多く、審査員のテンションも上がりました。個人的には今まで参加した審査会の中でも、特にドキドキするような、自身も頑張っていきたいと思えるような楽しい年でした。
作品へのコメント
『サンダーバード』
まずこの作品が審査会に登場した時に、作品のインパクトに「ワオ」と驚きの声が上がりました。評価されたのはインパクトだけではありません。1つ1つ細かく見ていくと手作業で制作された箇所がとても多く、非常に丁寧に作られていて、そういったところから一生懸命さや想いが審査員に強く伝わってきました。また、対象アイテムは、これぞOldAmerican®といったアイテム本来の特徴を生かしたベーシックな使い方ではあるが、作品によく出ていたのではないかと思います。ここまで仕上げたという作者の想いに感動しました。
作品へのコメント
『YOROI』
「YOROI」というテーマから重厚なイメージを持ち、彼女の作品を拝見しました。非常にカラフルで、色々な生地をつなぎ合わせて制作していますし、一つ一つの縫製も非常に丁寧です。袖もデタッチャブルになっていて、気候の変動や動きやすさなど色々と配慮されていると感じました。スカート部のファスナーを開けると中から綺麗な可愛いプリーツが現れ、強さだけでなく優雅さもあり非常に良い作品だと思います。
『イソギンチャクをイメージした2wayサンダルスニーカー』
海水浴やプールなど場面に合わせて、スニーカーとサンダルがジョイントしているというアイディアが非常に面白いと思いました。アイディアは、非常に素晴らしいのですが、実際に審査時に試着してみると、スニーカーとサンダルの結合部が少し柔らかく、歩く際にちょっとズレる感じがしました。今後改良していただき、ますます良い製品に仕上げていただけることを期待しております。
ご挨拶・今後の展望
本年度も、全国から5,000点を超える多くの作品を応募いただきまして本当にありがとうございました。入賞されたされてないに関わらず、全ての方々に、心から感謝させていただきたいと思います。また厳正なる審査をしていただいたデザイナーの先生方にも感謝を申し上げます。(本年度より社長に就任し)今回、初めて審査員の一人として参加しましたが、本年度の注目すべき点は4名の外国籍の方が受賞された事です。遠く離れた異国にデザインを勉強しに来られ、多くの苦悩の中で大きな希望と大志を抱いて頑張っておられることと思います。日本発のデザイナーをより多く輩出するという目的で17年前にこのファスニングアワードを開始しましたが、その審査においては、国籍や国境にいっさいこだわりはございません。これからもYKKファスニングアワードは、より国際性豊かなイベントとして、皆様のご支援を仰ぎながら、ますます進化させていきたいと思っておりますので、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。