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YKKのDNA

海底で静かに息づくファスナー


■完成近い青函トンネルに問題発生
青函トンネル内部の様子のイメージ
青函トンネル内部の様子
(提供:北海道旅客鉄道(株))

1970年代も終わりに近づいたころ、青函トンネル建設は急ピッチで進められていた。
海底を掘り進み、鉄道をつなげるという国家的プロジェクトの完成がようやく見えてきたころの話である。ようやくトンネルの完成が見えてきたところに、大きな問題が生じた。


海底を走ることになる青函トンネルの大きなテーマは、まさに「海水対策」であった。
トンネルに襲いかかる大量の海水は、毎分26トンにもなると試算された。たいへんな水圧である。その水がトンネルのコンクリートのジョイント(継ぎ目)から漏れ出てきてしまう。
そこでトンネルの壁の中には、トンネルに入り込んでくる海水を外へ流す「漏水用トイ」が通され、これで一件落着と思われていた。ところが、水と一緒に流れ込んだ微生物などが、この「トイ」の中にこびりついて、水をつまらせてしまうことがわかったのだ。


定期的にそのバクテリアやカビなどの堆積物を掃除しなければならない。
だが、なにせ海底での仕事である。そんなにカンタンに開けたり閉めたりすることはできようがない。


「海底でも開け閉めがカンタンにできて、水が漏らないような方法がないものか?」


いろいろな開閉の方法が試されてもみたが、やはり、どれもうまくいかない。
そこで、関係者たちの頭に浮かんだのが、ファスナーであった。
そうはいっても海底である。ほんとにファスナーが耐えうるんだろうか?


「ファスナーのことならYKKだろうか」


当時の国鉄の仕事を受けていた商社の担当者が、YKKに電話をすることにしたのである。

■どんな注文にもNOといわない姿勢
当時の北山のイメージ
当時の北山

当時の営業担当北山係長は相談を聞き、直感的に「面白いな」と感じた。実は防水の金属ファスナーができたばかりだったので、なんとかなるのではないか、という思いもあった。だが、北山の一番の支えは「ウチの技術陣なら何とかしてくれるだろう」という信頼感であったのだ。
さっそく当時の技術研究部 笠井課長に相談した。


「なかなか難しいことを頼まれたなあ」
「でも、やってみましょうよ」
「やってみるか!」


彼らにそう言わせたのは、「どのような注文にもNOといわず、まず試作品をつくってみる」というYKKのDNAである。
「できない」とか「無理だ」と最初から断るのはカンタンだ。でも、それではいけない。もともと小さな町工場だったころからの姿勢であったが、80年代になっても、それはうすれていなかった。


試作品をつくったところ、あっさりオーケーが出た。
ところが、それから本当の戦いが始まることになった。


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